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『転生×木刀×√魔王』
「お?もうカメラ回ってる?」
口をぽかんと開けた間抜け面でスーツの滝澤がレンズと目を合わせる。カメラを調整していた湊は滝澤が慌てて髪を七三に整えている様子に苦笑する。
「回ってるよ滝澤。今更身だしなみ直しても遅いって。」
さらに滝澤の背後からやってきた白いドレス姿のナスカがその背中を叩く。
「そうよ滝澤。普段から整えておくのがマナーって習わなかった?」
その横で黒いドレスを着たルナも自分のドレスを見てパタパタと翼を上下する。
「ルナは大丈夫かな?大丈夫かな?ドレス似合ってる?」
どうやら自分の衣装が珍妙な状態になっていないかどうか不安なようだ。
「ルナは心配ないな。心配なのは滝澤だけだ。」
紫のドレスを纏った艶美な雰囲気のヴィルがナスカに服装のズレを指摘される滝澤を見て笑う。
「お前らまでそんなこと言うの!?」
「文句言ってないでさっさと始めるわよ。アンタが居ないと始まんないんだから。」
涙目の滝澤はナスカに小突かれて姿勢を正し、合図の代わりにパンッと手を叩く。
「じゃあ、明けまして!」
滝澤の前フリに合わせて五人が一斉に叫ぶ。
「「おめでとうございます!」」
綺麗に揃った挨拶に滝澤除く一同は「(滝澤がやらかさなくて良かった。)」と、心の中で安堵する。どんだけ信用されてないのだ、この男は。
だが、そんなことはお構い無しに滝澤は挨拶を始める。
「おし、全員揃ったな。今年も『るーまお』をよろしくお願いします!今年の俺はドラゴン退治をしたり、お姫様助けたり、ヤバいやつと戦ったり、カッコいい活躍をいっぱ」
自慢げに語る滝澤の足下が二つに割れ、そのまま黒い塊が落下していく。
「お、御騒がせしました。滝澤の騙りはいつもの事なので…」
「湊さんも大変なのね。」
画面に向けて謝る湊の肩にナスカが同情の意を込めて手を置く。
「ナスカちゃんも、滝澤の相手、大変だよね?あいつそういうとこあるから…」
そのまま二人は滝澤の厄介トークをすべく画面から消えていく。
「色々大変なようだが、辛い時は『るーまお』を見て気を紛らわせて欲しい。多分滝澤の方が酷い目に遭っているからな。」
「じゃあ、またね〜!」
ルナが手を振る様子がカメラに映り、ヴィルが画面側に向かって歩いてくる。そして、録画終了のボタンが押された。
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