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今度こそ本命だな。「因幡」という名の通り、兎のような耳が生えた僕と同じくらいの少女が足を洗っている。
「因幡神。で合ってる?」
「そう、因幡神。この祠に祀られている由緒正しい神よ。」
偉そうに背を反らせる少女からはあまり威厳を感じられない。神というものは信仰や認知の度合いによってランクが決まるらしい。
よってこの因幡神はあまり認知も信仰もされていないという事だろう。
「ところで、僕を呼んだのには何か意味が?」
マイナーとはいえ、一応神がわざわざ僕なんかを呼ぶ理由が思いつかない。遊び相手とか、お供え物目当てとかその辺りだろう。
「婿。」
ただ一言、因幡神は答えた。その意味を頭の中で何度も反芻してみるけれど、やっぱり意味は理解できない。
「汝を婿として迎える。今から汝はこの因幡神にその生涯を捧げるのだ。」
一生、ここに。それは流石に嫌だ。なにより、僕は因幡神が苦手だ。
そして咄嗟に僕が吐いた言葉は。
「僕は落ち着いた子の方が好きだ。」
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