黄金甲虫と魔の森の管理人

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 婆さんは俺を助けたのはたまたま最後まで生きていて、そして襲われる直前に声をかけられたのを思い出したからだといった。  あとはまあ、泣き叫ぶ姿に憐みを感じた気紛れだと。つまり俺がガキだったからだ。  黄金甲虫がすぐに俺を襲わなかったのは後ろにいたからじゃなく、やつらが嫌う匂いが原因だった。  そう、婆さんがつけていた香水だ。直談判した俺だけがその恩恵をわずかに受けていた。  いくつかの偶然で辛うじて命を繋いだ俺は、ある意味一獲千金を成したくらい幸運だろう。  とはいえ森の秘密を知った俺に自由はなく、黄金甲虫の羽根一枚を実家に送って貰うのと引き換えに俺は婆さんの養子になり魔の森の管理を手伝うことになった。両親や妹と離れるのはつらかったけど命には代えられない。  名前も変えることになった。  今までの名前を忘れる必要はないけど、公の場では新しい名前を使うようにと言いつけられる。  俺は馬鹿さの代償として右手と名前と家族との日常と、色々なものを失った。  だけど妹の命は救えた。騎士家の養子になったのも身分が上がったと考えれば悪いばかりじゃない。  ただ俺は、分不相応な旨い話に乗るのはもう絶対にやめると、それだけは固く心に誓った。  こんな奇跡は二度と起きないだろうから。
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