特別国家公務員「自粛警察」

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「――おまえ達! 死にたいのか!? ソーシャルディスタンスをちゃんと守れ!」  彼らの活躍の場は飲食関係に留まるさらない……例えば、限定品発売日の店舗前に並ぶ客の行列を見つけては、友人だろうがカップルだろうが家族だろうが、ちょっとでも距離を詰めている者がいたら猛犬の如く激しく吠えかかる。 「なに出歩いてんだ! それは不要不急の外出か!? とっとと家帰って巣篭もりしてろ!」  また、観光地を訪れていた旅行客達にも無差別に食ってかかり、今すぐ帰宅するように容赦なく促す……というか、もう旅もへったくれもないような不快な精神状態にして追い払う。  偏った正義感を持つ自粛警察の彼らには、観光地の宿泊施設や店舗が立ち行かなくなるかどうかなどという問題は関係ない……どこまでも自己中なやつらに、経済について気を配る頭などこれっぽっちもないのだ。  いや、それどころか、そもそも他人(ひと)がどんなに迷惑を被ろうとまったくもってかまいやしない……。 「――なんで窓締めきってんだ! 密閉空間はダメだって教わってるだろ!」  真冬の寒空の下、小学校を訪れた自粛警察は、それでも換気のためにわずに開けらていた窓ガラスをすべて全開に開け放ってゆく。 「ううっ…先生、寒いよう……」 「うるさい! そのくらい我慢しろ! ガキのわがままなんか聞いていられるか! 俺達の頃なんかなあ子供は風の子って言われてたもんだ!」  教室の子供達はぶるぶると震えながら寒さを訴えるが、その哀れな姿も彼らの捻くれた心を動かすことはなく、むしろ激昂してこどもらをドヤしあげる。しかも、オヤジ達が一番嫌われる「俺達の頃はなあ…」の台詞まで織り交ぜてだ。  相手がどう思おうが困難に苛まれようが、そんなことは彼らにとって問題ではない……自己満足の正義感に酔いしれることだけが、彼ら〝自粛警察〟の行動原理なのである。
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