出会いと伝説

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出会いと伝説

「うえーん!」 泣き声が聞こえてきた。ふと気になって、そこへ近づくと坊やが涙を浮かべていた。どうやら迷子になったようだ。 「ママの所に帰りたい……」 おいらはその子に寄り添ってやることにした。どこで離れて、どこで迷ったのかわからないが、見捨てる訳にはいかない。おいらは身軽な流浪人さ。ひょいと背中に乗せて、風を頼りに坊やと一緒にママを探す旅に出た。 「さあ、目を開けてまっすぐ前をみてごらん」 おいらの背中がうっすらと潤んできたが、そんなのすぐに乾くはずさ。 「うぁー、空を飛んでるみたい!」 いつの間にか泣き止んだ坊やが目を輝かせていた。 「どんなもんだい。おいらは風と友達なのさ。どんなところへも飛んでゆけるのさ」 ちょっと足を踏み込めば、高いところだってお手の物。どんな遠いところだってあっという間にひとっ飛び。 「泣きべそ坊やが笑ったな」 「坊やじゃないもん。ニーダだもん」 「おいらにとっちゃあ坊やに変わりはないさ」 颯爽と駆け抜ける風の道を、どこまでも飛び続けた。
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