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楽しい時間はあっという間に過ぎていき、夜も次第に更けていった。
爺さんは徐に、苦虫を噛み潰したような表情をして、独り言のように話し出した。
「お主はこの村の伝説を聞いたことはあるか? いや、この村だけではない。我ら生きとし生けるもの全ての世界で起こる脅威を」
「少しは耳にしたことはあるが詳しくは……」
「我らの棲むこの村では、年に一度、大パニックに陥る。正直本当のことはわからんが、大きな竜巻とともに大戦争だの、大自然の怒りだのと語り継がれている伝説があるのじゃ」
爺さんは少し顔を歪め、訝しげに語り続けた。
「ふかふかの綿の上で今は有意義に暮らしておる。しかし、いつまた熱風が襲い、強大な竜巻が現れ、毒霧が空を覆い、我々を脅かす時がくるやもしれん。手を変え品を変え襲ってくる見えない敵に、我々はいつも怯えている。以前棲んでいた場所は雨の多い時だったのじゃが、ここに来てからというもの、それがやってくるのは、決まってたいそう寒い日なのじゃ」
「おいらも、突如出現したブラックホールのようなものに吸い込まれ無二の友をなくした。命からがら逃げてきたが、友を助けることは出来なかった」
「無理もない。突然の自然の脅威には、我々は為す術もない。非力とは、本当に辛いものじゃな」
懐かしい友を思い出し、ふと涙が込み上げてきた。
「僕が爺ちゃん達を守る!」
小さな勇者は拳を胸に当て、強く決意を固めた瞬間だった。爺さんがニーダの頭を優しく撫でる様子に、なぜだかおいらは直視することが出来なかった。
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