希望

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 帝國大学へ進めるのは、本来男子のみである。そもそも、帝國大学へ進むためには、高等学校を卒業しなければならず、高等学校へ進むためには、義務教育である尋常小学校卒業後、中学校を卒業しなければならない。中学校も高等学校も、入学資格があるのは、男子のみであり、また、そのほとんどは裕福な家の子弟に限られている。  そうでない男子は、尋常小学校を卒業後、高等小学校や実業学校等に進む。高等小学校を出た後に実業学校へ行く者もいれば、師範学校へ進む者もいる。その後は皆、それぞれ職に就くことになる。  また、月季子の兄である彰雄のように、尋常小学校卒業後、陸軍幼年学校に進み、職業軍人の道を歩む者もいれば、中学校卒業後に、陸軍士官学校や海軍兵学校に進む者もいる。  女子の場合、尋常小学校を出た後は、男子同様高等小学校や実業学校の女子部等へ進む他、今の月季子や友莉絵のように、高等女学校へ進むことになる。  高等女学校以降の進学先としては、女子高等師範学校か専門学校ということになり、それ以上の進学先は無いのだ。  とはいえ、良家であればある程、娘の更なる進学には消極的である。  女学校ならば、教養を身につけ、人脈を広げる意味もあるから、どの家も喜んで進学させる。しかしそれ以上は婚期を逃しかねないため、早々に娘の結婚を決め、女学校を退学させる場合も多い。卒業出来たとしても、卒業時には既に婚約者がいる場合も少なくない。  また、女子高等師範学校を卒業した場合、たとえ私費生であっても奉職義務がある。良家の娘にとっては、職に就く必要もないため、余程家族の理解が無ければ、進学は難しい。  つまり、女学校を卒業した女子の進学先は、そもそもの需要が少ないのだ。
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