少女達の鎮魂歌《レクイエム》

希望

「友莉絵さん、友莉絵さん。お聞きになって」
　女学校に登校した峰雪友莉絵(みねゆきゆりえ)は、教室に入るなり、幼馴染みの丹沢月季子(たんざわつきこ)に駆け寄られた。
「月季子さん、どうされました」
　幼い頃から変わることのない月季子に、友莉絵は苦笑いを浮かべる。
「この官報、ご覧になられまして」
　月季子は、友莉絵の表情に気付く様子もなく、握り締めていた官報を広げた。

　　官報　第三百十九號　大正二年八月二十一日　木曜日

　　○學事

　　○入學許可　東北帝國大學理科大學ニ於テ今般入學ヲ許可シタル者ノ族籍、
　　氏名イロハ順左ノ如シ（文部省）

　　数學科第一學年
　　京都府平民　　牧田　らく

　　化學科第一學年
　　鹿兒島縣平民　丹下　ムメ
　　佐賀縣士族　　黒田　チカ

　男子の名に混じって、三人の女子の名が記されている。
　初めて、帝國大学に、女子の入学が許可されたのである。