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黒夜叉は剛臣についての説明を始めた。紛い物の担任教師とは言え、剛臣のことはよく見ていたのか褒めに褒めちぎる。余談だが、あたしのクラス全員のことはよく見ているようで、成績査定や家庭問題の解決も忍術を使って成し遂げている。
担任が変わって以降、あたしのクラスは「皆が素直でいい子」であると校長・教頭皆ベタ褒めである。黒夜叉は忍者より教師の方が天職ではないだろうか。
「成程、お父さんとしては娘がどこぞの馬の骨とキャッキャウフフとしているだけで悔しく思うのだがな。お前が選んだ相手なら仕方ない」
「お父さん!」
「だがな、お前に与えられた『任務』は最後まで成し遂げなさい。中途半端はいかんぞ」
「任務ってあいつの監視?」
「それ以外に何がある?」
「殺すか、惚れさせるか? 殺すのは絶対にないってのは変わりません。惚れるにしても、あいつがあたしを好きじゃない以上はどうしようもありません。でも、秘密は守ってくれます」
「おお、言い切ったな」
「男の人として好きではないけど、あの人は信用出来ます。心配ならどうせ中学も一緒なので監視の延長もします」
「忍者と言うのは同胞以外は信用してはならぬと、予予教えてきておるのに」
「あたし、同胞以外の人も信用して生きていきたいです。そんなに言うなら忍者やめるね? お母さんだって堅気なんだから問題ないでしょ?」
「そ、それはそうなんだが……」
「明日から忍者やめて彼氏持ちの普通の女の子になります!」
父が修羅の形相を見せ、スプーンを皿の中に叩きつけた。
「忍者の家に生まれし者にこんなことが許されると思っとるのか!」
「生まれただけよ! 大体何!? いつもいつも変な訓練ばっかりして! 天井にぶら下がるとか、何時間も水の中に潜るとか! 火遁とか水遁とか雷迅とか意味分かんない!」
この後は父と娘の阿鼻叫喚の大喧嘩。屋敷中を駆け抜けながらの忍術のぶつけ合い! 決着もつかず、父が「風呂に入る!」とフッと姿を消したことでスコアレスドロー。
あたしはふてくされながら自室へと戻り、泣きべそをかいて枕に顔を埋めるのであった。
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