急の巻 忍者に生きるか、青春に生きるか

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 給食の時間になった。剛臣と泰司は同じ班と言うことで、校長室での給食に行ってしまった。担任教師も皆ともうすぐお別れと言うこともあり、いつもは教員机で黙々と給食を食べているところを、あたし達生徒の机を班ごと日別に回って給食を食べている。あたしは黒夜叉の完璧な教師なりきりに驚嘆するのであった。  あたしは黒夜叉と一緒に世間話に興じていた。小学生の給食時間と言うのはいつの時代もペチャクチャと騒がしいもの。あたしはその喧騒に紛れて黒夜叉の一年の苦労を労うことにした。 「一年間、お疲れ様。来年も教師続けるの?」 「来年はちゃんと忍者業務に戻ろうかと。本来の担任も四月には隣の小学校に転任でしたので引き継ぎも不要です」 「成程、これなら入れ替わりもやりやすかったと」 「お(ひい)様の不手際の後始末のために御館様に命じられたことだったのですが、私の出る幕はなかったようですな」 「どうせなら塾の合宿の時に手伝って欲しかったわよ。何でクマと生身で戦ってんの?」 「おや、普通では? 私や御館様なら、あの程度のクマなぞ二秒で」 「あたしの細腕であんなの倒せるわけないでしょ?」 「お(ひい)様がこれからちゃんと修行を積めばあれぐらいは二秒で倒せましょう」 「あたし、昨日で忍者やめたから。もう修行しない」 「御館様はお怒りでしたよ」 「知らない」 「御館様の八つ当たりで夜中に忍者組手に付き合わされましたよ。体がうまく動きません」 「……それは、ごめん」
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