急の巻 忍者に生きるか、青春に生きるか

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 校長室ではテロリストのボスと思われる筋骨隆々とした男が校長の豪華な机の上に座り、壁掛けテレビで民自党総裁選の様子を固唾を呑んで見守っていた。校長室の隅に置かれた本棚、その真横の壁際には今回、校長と共に給食を食べる班の者達が拘束されていた。泰司以外は目隠しをされヘッドホンを被せられ後ろ手を縛られての厳しい拘束である。 「おう、お前のカーチャン辞退しねぇなぁ? 辞退しないと息子殺すって脅してるのに、いいカーチャンだ」 「ママは…… お前らみたいなテロリストなんかに屈しない」 「おうおう、流石は政治家の息子。しっかりしてやがる。でもな、人の命ってのは地球よりも重いんだぞ? 母親にとっては息子の命ともなればそれ以上だ」 「日本だけで考えても、地球より重い命が一億ぐらいはある。テロに屈すると言うことは一億の命を危険に晒すことになるんだ。だからテロリストとは交渉しない。テロに屈する政治家は政治家失格だ。ママは政治家だからこのことはよく分かってるよ」 「成程、交渉には応じないってことか。でもな? 痛みと血を見れば、答えも変わるってもんだぜ?」 ボスは胸からアーミーナイフを出した。 「俺達が本気だってことを示すために、指でも切るか? 切られた指の写真でも送れば涙を流しながら辞退してくれるだろ……」 古典的な凶悪誘拐犯みたいなことを。下衆の極みも大概にして欲しい。あたしは「キレた」 あたしは我を忘れ、そのまま捕まったロープを思い切り振り子のように揺らし、校長室の窓を突き破って突入した。ガラスが破砕する音を聞き、振り向いたボスの顔面にあたしの蹴りが炸裂した。ボスはあたしの蹴りの勢いに乗って校長室の扉を突き破るぐらいに回転し突き飛ばされてしまった。 あたしはそのまま校長の机の上にスタッと着地した。泰司はそれをただ呆然とした顔で眺めていた。あたしはヒョイと机から飛び降り、泰司に向かって手を伸ばした。 「大丈夫?」 「と、とりあたま…… どうやって……」 校長室に行く廊下や階段は全て防火シャッターで防がれていた。だからあたしは四階の窓枠に鉤縄を付け、そのままラペリングで校舎の壁を下り、校長室に突入したのである。 「待ってて、今拘束解くから。おばさまに連絡してくれる? もう心配ないって」 「あ、ああ…… 分かった。後ろ!」 泰司が「後ろ!」と叫んだ瞬間、あたしは背後に殺気を感じ、後ろを振り向いた。あたしは振り下ろされるサブマシンガンのグリップエンドをクナイで受け止めていた。
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