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後ろにいたのは剛臣だった。剛臣はあたしの顔を見て驚いていた。
あたしだってサブマシンガンを持った剛臣を見て驚いていたぐらいだ。
「蘇我…… くん?」
「古賀…… さん?」
剛臣は慣れた手付きでサブマシンガンの銃口をあたしに向かって構えた。
あたしは反射的にクナイを振り抜き、サブマシンガンの銃身を両断する。
両断されたサブマシンガンより弾丸がメダルゲームのコインのようにジャラジャラと落ちていく。
剛臣はサブマシンガンをポイと投げ捨て、ポケットから素早く拳銃を出し、あたしに向かって構えた。
あたしは状況が理解出来ずに剛臣に向かって叫んだ。
「どういうことよ! 何で鉄砲なんて構えてるのよ!」
剛臣はあたしに向かって叫び返した。
「こっちだって聞きたいよ! お前何者だよ!」
暫しの沈黙の後、剛臣は察したように言い出した。
「この国の政治家、それも権力者と呼ばれる上級クラスは『忍者』を雇っているって聞いたことがある。古賀さん、忍者だったのか…… そんなのってねぇよ……」剛臣は悲しそうな顔を見せた。あたしだって、同じ表情で泣き叫びたい気分だ。しかし、歯を食いしばり悲しみに耐えた。
「あなた、誰? この銃の使い方、普通の小学生じゃないよね?」
すると、剛臣は表情を一変させて笑い始めた。それから自分の素性を説明し始めた。
「まず、俺は小学生でも蘇我剛臣なんて名前でもない。ぜぇんぶ嘘だ。俺はとある国の工作員、いわゆるスパイだ」
「似た者同士か」
「俺は難民キャンプ生まれでな、栄養状態も不足してて、体の成長も途中で止まってしまった。俺、こう見えて二十八歳のいいオッサンだぜ? 合法ショタだと笑ってくれてもいいぜ?」
「……」あたしは黙り込んでしまった。あまりの衝撃的な告白に何を言えばいいのか分からないと言った方が正しいかもしれない。
「俺の国って言うのは、日本とはふかーいふかーい付き合いがある国でな?ODAとかって多額の支援もしてもらっているんだ。それと、出稼ぎ労働者を日本に送り、本国に入金してもらっての外貨獲得にも役に立って貰ってる」
「技術研修生……」
「よーく知ってるじゃん? 日本のとある政治家…… 俺の雇い主は技術研修生って名目で俺の国からいっぱいいっぱい人を入れてくれたんだ。あちらとしては『労働力』が欲しいだけなんだろうけど、こちらからしたら合法的に日本で金稼げるとあって大助かりだ。そのためにウチの国の大統領も政治家に金とか送ったらしいぜ? Win-Winってやつだ」
「雇い主って、今の総理大臣?」
「そうだよ。お互いに甘い汁吸わせて貰ってたんだ。ところがだ、それに楔を打ち込む奴らが出てきてな」
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