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「やっぱり俺達似た者同士だね? ってことは忍者って正体バレたら相手殺さなきゃいけないんだよね? 日本から密輸入されてきた漫画まんまだ! 凄い! だったらこいつ殺した方がいいってことだよね? もう邪魔しないでよ。もう彼氏彼女なんだし、仲良くしようよ? ね? ね? ね?」
そうね、似た者同士ね。工作員も忍者も似たようなものだ。正体がバレた時の処置もね! 剛臣はあたしに向かって銃口を向けていた、正体を知ったあたしを生かしておくはずがない。好きだった人に拳銃向けられて殺されるなんて、嫌だなぁ…… あたしの青春ってなんだったんだろう。
あたしは力なくクナイを下ろしてしまった。
その目の前に泰司が立ちはだかった。
「鶏頭に手を出すな! お前の好きと違って! 俺は本当にこいつが好きなんだよ!」
「はぁ? 俺は本当に古賀さんのことが好きだよ。でも、正体を知られた以上は」
泰司はそのまま剛臣の顔面を殴りつけ、叫んだ。剛臣は不意打ちを受け、床に倒れてしまう。
「好きな女に銃向けるんじゃねぇよ! このとっちゃん坊や!」
「……」
剛臣は何も言わずに何かを考え込んでいた。そして、泰司の額に向けて銃口を向けた。駄目だ! 間に合わない! 長机のガードも、庇うのも間に合わない! あたしが全てを諦めた時、目の前に入ってきたのは本棚だった。
あたしは本棚の木材の付喪神に向かって救済を願った。
〈臨兵闘者皆陣列在前! 本棚の付喪神よ! 泰司を…… 御守護り下さいッ!〉
本棚の付喪神、正しくは木材の付喪神がそれに応えてくれた。急成長した木材が剛臣が放った弾丸から泰司を庇い受けた。
木材の急成長は止むことなく、剛臣の体を覆い、その動きを拘束していく。
剛臣は瞬く間に本棚が成長した木に呑み込まれてしまった。
あたしはこれでチカラを使い切ってしまったのか、ぐたりと倒れてしまった。
この後のことはあまり覚えていない。
ただ、泰司があたしの名前をずっと呼んでいたことと、日本憲政史上初の女性総理誕生を報せる拍手がテレビから聞こえてきたことだけは朧げながら記憶に残っている。
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