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俺は上宮泰司。今日、総理大臣の息子になったばかりの至って普通の少年である。
ただ、俺が好きな女の子の古賀鶏頭は普通じゃない。マジモンの忍者だ。
小学校一年生の頃に鶏頭に一目惚れをして以降、小学校六年生になって卒業を控えた今でもその気持ちは変わらない。けど、俺はシャイで鶏頭と話すキッカケがなく悶々とした日々を過ごしていた。
出来ることと言えば、鶏頭と言う名前をからかって接触することぐらいだ。
それをキッカケにしたせいか蛇蝎のように嫌われたのだが、引くに引けない。まあ、好きな女の子に意地悪しちゃうシャイな少年の愚かな行為故に仕方ない。
俺が六年生になり、その関係に変化がないかなと考えていた頃だった。
下着姿で公園に佇む鶏頭に偶然遭遇したのは僥倖だった。話はよくわからないが忍者だと言う。しかも、俺が口を滑らせないように監視まですると言う始末。殺す云々は置いといて、常に鶏頭と一緒にいることになり俺は凄く嬉しかった。
だってそうだろう? 好きな人と一緒にいられるのだから。
本当に死にかけることもあったけど、常に鶏頭が守ってくれた。俺はそれが嬉しかった。
それからなんやかんやあって、友達の剛臣と鶏頭が彼氏彼女になったって聞いた時は心の中で無茶苦茶泣いた。鶏頭が目の前にいなかったら、その場で号泣して泣いてたと思う。しかも、相思相愛だと来てやがる。俺の入る余地はないとして諦めてしまった。俺みたいなちんちくりんじゃ剛臣には逆立ちしても敵わない。
ここから先は怒涛の展開、剛臣が外国の工作員と発覚し、実は28歳の合法ショタで…… これは正直どうでもいい。
ずっと俺を監視していたそうな。
剛臣の国にとって不都合な存在であるママが総理大臣になるのを阻止するための監視だったらしい。その監視の末に殺されそうになった時も鶏頭は命を張って助けてくれた。やっぱり鶏頭は最高だ。
好きになって良かった。
鶏頭からすれば、俺と一緒にいてくれるのは総理の息子の護衛と言う任務に過ぎない。でも、それでいいんだ。こいつと一緒にいるだけで楽しいからこれでいい。
古賀邸からの帰り道。俺がそんなことを考えながらボーッとしていると、鶏頭が声をかけてきた。
「アンタと中学入った後もずっと一緒かぁ…… 全く、あたしの青春ってこれでいいのかなぁ……」
俺は口には出さず、鶏頭に答えた。
今はまだちんちくりんな俺だけど、一緒に青春時代を過ごせて良かったと思えるぐらいに成長するよ!
俺は月明かりに照らされた鶏頭の可愛い顔を見ながら固く誓うのであった。
おわり
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