【10】

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「カスバートの言ってたことが本当なら、俺は尉官を降格になるようだからな。後方勤務の下士官は個人の護身用の銃を携行できないんだ。だから、預かっててくれ」  リロイはぎこちない手つきでリボルバーを手に取った。何度か確かめるように握り直すと、床に落ちていたコートを拾い上げ、ポケットにそれを入れる。 「わかりました。お預かりします」  そのコートを、階段に向かう戸口の脇の外套掛けに引っ掛ける。 「その代わり、約束してもらえますか」 「なんだ」  リロイが振り向いた。 「待ってますから、必ず取りに戻って来てください」  リロイの声が、ヴァイオリンの弦のように張り詰めて震える。その声の響きで、わかった。  リロイはエデルマンにも同じことを言ったのだ。待っているから無事に戻ってきてくれ、と。  その約束は、果たされずに終わった。 「リロイ」  ラルフはくっと顎を引いて、色の異なるリロイの両目を見つめ返す。  右舷に青。左舷に黒。  昼と夜を同時に宿す瞳。  この両目を昨夜のような深い絶望から守り通せるのなら、自分はどんなことでもする。 「約束する」
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