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手本を示してから、リロイと交代してハンマーを握らせる。耳のいいリロイは、おっかなびっくりではありながら、細い指で同じリズムを忠実に繰り返す。
「そうだ。それに続けて、短音を三回、長音を三回、そしてまた短音を三回」
とんとんとん、とーとーとー、とんとんとん、と、打鍵音が部屋の一角に響く。
「近くにいる船がこの信号を受信すれば、助けに来るなり、司令本部に通報するなりしてくれる」
リロイが、真剣な面持ちで頷いた。
「いいか。何か少しでもおかしなことがあったら迷わずこれを打て」
「はい」
もう一度通信のやり方を繰り返させてから、ラルフは再び送信機のスイッチを入れた。
「あとは、これだな」
腰から自分の拳銃を抜く。銃身を握り替えて、銃把をリロイの方に向けて差し出す。
「護身用だ。持っておけ。撃ち方はわかるか」
「あの、少尉……僕は片目が見えないんですよ。銃を撃つなんてとても」
「構えるだけで相手は怯む。敵に当たらなくても、発砲するだけで充分に威嚇になる」
「でも、少尉は」
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