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『……は?』
急いで後ろを振り向いた。
どこからか分からないが、足跡が二人分になっている。追ってきた足跡と、自分の足跡だ。
前を向き直すと、一人分の足跡が続いているだけだ。
『は、……え?』
視線を落とし、自分じゃない足跡を注意深く見る。足跡は最初見たものより薄く綺麗だが、やはりそれは自分達の、コウの足跡では無い。
『じゃあ、僕が追い抜いて……?なら、コウは、この足跡の生き物は、どこに……』
足跡は何度見ても一人分で、未開の地へと、
『……この足跡……宇宙船へ、向かっている……?』
足跡は未開の地に向かっていた訳ではない。
未開の地から、宇宙船へ向かって来ていたのでは?
途端に心臓が高鳴った。
足先が冷えていくのが、息が荒くなるのが、自分で分かる。
それでも必死に頭を回した。次から次へと、考えたくもない事ばかり浮かんでくる。
この考えが正しいのなら、何かが宇宙船へ向かっていた。
最初に見つけたあの足跡の場所まで来ていたのだ。
僕達の足音に驚き、身を隠したとすれば?
僕が宇宙船に戻り、宇宙船からあの場所に戻るまで姿は見かけなかった。
だとしたら、それはコウの後を追って行ったのでは?
だとしたら、コウの足跡が消えたのは、
振り返る事は出来なかった。
もう笑う事しか出来ずに、迫り来る運命を受け入れた。
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