番外 すべてがいとおしい

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「一星、遅かったねー」 「委員会が長引いちゃって。無能ばっかりで本当困るよね」 「一星ってばまたそんな言い方してーダメでしょ? めっだよ?」  小さい子を叱るように言う七星。  怒る姿も可愛いとか……。 「はーい。七ちゃんごめんね? 嫌いにならないで?」 「嫌いになるわけないじゃない。さ、手洗っておいで? ごはんにしよう?」  ――――――だが、俺は何を見せられているんだろう?  番が他の男(弟)といちゃつく姿を見せられている?  七星にデレデレの一星とそれを受け入れている七星。  俺は蚊帳の外だ。  さっきまでの幸せな気分がしぼんでしまう。  どうして七星の弟の一星が「ただいま」と我が家に帰って来るのかというと、俺が会社から帰って来たらそういう事になっていた、としか説明ができない。  理由は何か言っていた気もするがショックが大きすぎて耳に入ってこなかったのだ。  俺たちが番になって、翌週には一星は我が家に一緒に住む事になっていた。  その事を聞いた俺が呆然としている間に話は進んでいて、今更反対する事もできなくて――今に至るという事だ。 「七ちゃん洗面所の場所が分からないよー。ここに広いんだもん。連れてってー」  七星を抱きしめたままで甘えた声を出す一星。  七星も「しょうがないなー」って言いつつもそのまま一星を連れて行った。  リビングにひとり残された俺はどうしたらいいのか分からず途方に暮れていた。  相手は七星の弟だ。  甘えん坊だって言っていたし、大人の俺が少しくらい我慢しなくてはいけないだろう。  七星は俺の番だ。誰にも奪われる心配はない。ましてや弟なのだからそんな心配はするだけおかしい。  分かってはいる。頭では分かってはいるんだが――――番に弟といえど他のαの匂いが付くのは耐えがたい。  べたべたするなと一星を引き離してしまいたい。  一星を追い出して七星に嫌っていうほど自分の匂いを付けてしまいたい。  問題は七星が受け入れてしまっているという事だ。  それなら俺は怒る事なんかできやしない。  一星はいったいいつまでここに居るんだろう……?  俺は胸にぽっかりと穴が開いてしまった気がして、深くふかく溜め息をついた。
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