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一星が俺たちの家に住み着いて、俺がもやもやした気持ちを抱えたまま更に一週間が過ぎようとしていた。
今日は七星と一星と三人でショッピングモールに買い物に来ていた。
七星と一星は手を繋ぎ、ご機嫌でモールを歩き回っている。
俺は少し後ろからそんなふたりを見守っていた。
ふたりが急に走り出して追いかけようとした時、それは起こった。
あちこちからあがる悲鳴。逃げ惑う人々。
七星が暴漢に捕まりナイフをその細い首に突き付けられていた。
一星はそのすぐ傍で震えながら七星を見ていた。
頭の中がぐわんぐわんして煩い。
何も考える事ができなくて、ただ助けなくては。それだけだった。
目に映るすべてがスローモーションのようだった。
俺は七星と一星を抱き込み、背中にドンという鈍い衝撃を受けた。
痛みは感じない。ただ、何か温かい物が背中に広がっていく感じだけがして。
振り返ると駆け付けたガードマンに暴漢は押さえこまれているのが見えた。
――――よかった。
これでふたりに危険が及ぶ事はないだろう。
俺はふたりに笑いかけた。
俺の腕の中で涙を流しながら何かを七星が叫んでいる。
――ごめん。何も……何も聞こえないんだ……。
生意気な一星も泣いていて、その姿が七星と重なる。
あぁふたりはやっぱり兄弟なんだな、と思う。
泣かないで、七星。泣くな、一星。
ふたりの涙を拭おうと手を伸ばそうとするが腕が重くて無理だった。
あぁ……眠くて、眠くてたまらない。
今は少しだけ寝かせてくれないか?
目が覚めたら―――三人で美味しい物でも食べようか。
そのままぷつりと意識を失った。
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