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目が覚めると見知らぬ白い天井が見えた。
ぴっぴっぴっという無機質な音が部屋に響く。
起きたいのに身体が重くて起き上がる事ができない。
七星――。
七星はどこだ?
七星が泣いている。
早く抱きしめてやらないと――――。
「――なな……せ……」
うまく声が出せない。
――――なんでだ?
俺、まだ寝ぼけてるのか……?
「誠さん!!」
「先生! 来てください!」
七星と一星の声だ。
何を慌ててるんだ? ちょっと寝ていただけだろう?
俺がふたりを放って寝ちゃったから寂しかったのか?
ほら、もう目が覚めたんだから、もう寂しくないだろう?
「誠さん! 誠さん! 僕、僕――うわ――――んっ!」
声をあげて泣く七星。
鉛のように重い腕を上げ、俺に縋って泣く七星の頭をゆっくりと撫でてやる。
「な……くな……」
「だって、僕……僕……っ」
「……」
七星を安心させるように微笑みかけ、再び意識を失った。
*****
次に目が覚めたのは翌日の事で、その時は意識もはっきりとしていて、自分に起こった事をちゃんと理解していた。
七星が暴漢に捕まって生きた心地がしなかった事。
七星と一星を抱き込んで背中を暴漢にナイフで刺された事。
改めて思う。
ふたりが無事で本当に良かった。
それから何日か過ぎて、病室も一般病室に変わり、ひとりでトイレへも行けるようになっていた。
今日は七星も一星も学校へ行っていてひとりだ。
七星は俺が退院するまで学校を休んで付き添うと言い張ったが、俺が学校へ行くように強く勧めたのだ。
もうひとりで何でもできるくらいまで回復したのだから、このまま学校を休ませては卒業も危ういかもしれなかったのだ。
Ωはヒート時の欠席が国で認められているとはいえ、その分他の時の欠席は多くなると出席日数が足らなくなり、無事卒業できなくなってしまう恐れがあるのだ。
それに、七星の卒業式には真っ赤なオープンカーに積み切れないくらいの薔薇の花を積んで、キミを迎えに行く事が俺の夢になったんだから、ちゃんと卒業してもらわなくては。
この事はまだ七星には内緒だ。
卒業式の日の七星の笑顔が想像できて、俺は小さく笑った。
――――今から楽しみだ。
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