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「うん、楽しそう。小さい頃、豆まきしたの良く覚えてるよ。」
「ウチはね、そういうの全く無かったから…」
「由紀のお母さん、必死だったんだよ。一人で育てて大学まで行かせるって、とても大変だと思うよ」
「うん、分かってる。だから結婚したら、そんな家庭を持ちたいなってね。樹が結婚したいって思ってくれて嬉しいよ」
「誰がそんな事言ったよ。結婚したらの話だろう?結婚したいっていうのとは、また別の話だよ」
「ぶー、でも付き合うんだったらそういうのも考えなきゃと思わない?」
俺は多分、由紀とは結婚しない。漠然とそう思っていた。付き合って半年、理想はあってもそれに対して計画立てて何かを実行することがない。夢もそう、服飾のデザイナーになりたいって言う割に、文学部に入ってる。デザインの勉強も一切していない。授業が終われば飲食店でバイトしている。服飾とは一切関わっていない。そんな夢見がちな女の子だった。そして、1番気に入らないのは、僕が知らないと思っているのだとは思うけど、浮気もしている。
それを知ってるだけに、そろそろ彼女とは潮時かと思っていた。ただ、ちゃんと嫌いになれるのか不安があった。
そんなろくでもない彼女から唯一もらったのが、結婚観だった。彼女が欲しいというよりは、ちゃんと俺の事を見てくれる人が欲しかった。そんな人と巡り合っていないだけかもしれない。だいたい、浮気されて去って行かれることが多い。おそらく俺には繋ぎ止めるほどの魅力がないのだろう。
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