act6

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拓海と話がしたい。 そう思っていたものの……私は拓海に声をかけられずにいた。 というのも、キリがメンバーになっているプロジェクトでトラブルが発生し、拓海が責任者として対応に追われているから。 さらに、4月から拓海が後任となるグローバル事業部のマネージャーが、有給消化で最終出社日が2月末のため引継ぎ業務も重なり、拓海は連日終電ギリギリまで残業しているようだ。 ずっと会議室にこもって対応についての話し合いをしているらしく、ここしばらく拓海の姿を見ていない…… 同じく、いつもは隣にいるキリも席にほとんどいなかった。 キリと一緒に仕事ができるのも、あと少しなのにな…… 拓海から打診されたリーダーの業務を私は引き受けることにした。 山内さんに、『やってみたい』と話したら、『えー、引き受けるの?』とがっかりされた。 山内さんは、『あーあ、深山さんの営業センス、俺買ってたんだけどなぁ』とため息をついた後、『今後は新人、若手の育成に期待しています』と諦めたような笑顔を見せた。 山内さんにがっかりされて、『営業として私も必要とされてたんだな』と嬉しくなった。そして同時に、営業の仕事から離れることに寂しさを感じた。 キリのいない席をぼんやりと眺める。 キリには、色々助けてもらったなぁ。 キリは私のことをよく褒めてくれるけど、私からすれば、キリの方が有能で気が利く素晴らしい後輩だと思う。私の仕事が忙しい時は、すぐに気づいて、いつもサポートしてくれた。 仕事以外のことだって……
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