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「金曜なら、『みやまーに次の日のこと気にせず、ゆっくりしてもらえるから』だって」
「はぁー、イッチーらしい発想だよね。さすがだね」
私が感心していると、萌がムッとして言った。
「何がさすがなの!そもそも平日の昼間は私いつも一人でいるんだよ?夜1日いないだけで、香奈まで巻き込んでさ」
「夜は昼より心細かったりするじゃない?毎回思うけど、ほんとイッチーは奥さん思いのいいダンナさんだよ」
「うーん、心配してくれるのは嬉しいんだけど……あっ!そんなことより河瀬!早く連絡した方がいいよ!仕事忙しくて大変そうだから、とか、そんな遠慮アイツにはいらないって。香奈から連絡きたら絶対喜ぶよ!」
「え……萌?」
『拓海はダメ』と言っていた萌の変わり様に驚いていると、萌が私の顔を見て察したらしく、
「そうだよね。こないだまで河瀬のこと反対してたのに、急に応援するみたいなこと言って、おかしいよね……」
と、気まずそうに話を始めた。
「私ね、香奈の苦しんでる顔はもう見たくないって思ったから、河瀬とのこと反対してた……でもこないだ、『拓海とは終わったから』って言った香奈の顔が前より苦しそうに見えて、私間違えてたんだなって……色々ひどいこと言ってごめんね……」
萌が眉尻を下げて私を見ている。
心からの萌の言葉に、私は胸が一杯になった。
「ううん、萌は私のためを思って言ってくれたんだもんね。なのに、私も萌の幸せを僻むようなこと言って、萌を傷つけた。本当にごめんね」
私も心を込めて萌に謝る。
すると、萌の表情が柔らかくなった。
「実は私、結婚するまでずっと両親のことで悩んでて、すごく苦しかったんだ……『結婚なんかしない』って思ってた。でも、直樹が私の苦しみを一緒に背負ってくれたの。『一人じゃないよ、大丈夫だよ』って。だから私は結婚できた……直樹には本当に感謝してるんだ」
しみじみとした表情で、そう話した萌は、私を見て言った。
「だから、香奈の苦しみも河瀬に背負わせちゃえばいいよ!もともとあいつのせいなんだし。今の河瀬ならできると思う」
萌が私を見て、力強くうなずく。
「うん、ありがとね、萌」
心強い萌の言葉に、私は背中を押してもらえたような気分になった。
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