act6

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「そうだ!今から河瀬に……あっ、ごめん、ちょっとトイレ……」 「えっ!萌?」 突然、萌はお腹をおさえ、トイレに行ってしまった。 萌が心配で落ち着かない私は、トイレの前の廊下で待つ。 それから少しして、萌が苦しそうにしてトイレから出てきた。 「破水したっぽい……大丈夫じゃないかも……」 「えっ?破水?」 萌は顔をしかめながら、首をかしげた。 「たぶん……病院に電話してみる」 病院から『急いで来てください』と言われたと聞き、 「じゃ、た、タクシー呼ばなきゃ。それとも救急車?あっ!イッチーに連絡!萌、お母さんは?お母さんなら都内だからすぐ来てもらえるんじゃ……」 私が一人で慌てふためいていると、萌が、「香奈、落ち着いて」と私に言った。苦しそうなのに、少し笑っている。 「そ、そうだね、ごめん」 大変なのは萌なのに、私が取り乱してどうする…… 「陣痛タクシー登録してるから、呼べばすぐ来てくれると思う」 と言って、萌が電話をかけた。 陣痛タクシーなんてあるんだ…… と耳慣れない言葉に気を取られているうちに、萌はイッチーにも電話したようで、 「直樹が電話に出ない」 とため息をついた。 私もイッチーに電話してみるけど、やっぱりつながらない。 「今、直樹にメッセージ送ったよ。もし、後で直樹から連絡きたら、状況説明してもらってもいい?……お母さんは呼ばなくていいから……夜中だし」 「でも……」 「私は、香奈がいてくれれば大丈夫」 萌は苦痛に耐えながら、私に笑ってみせた。 「それより、寝室に、入院セットが入った大きなバッグあるんだ。持ってきてもらってもいい?」 萌に言われて、寝室から大きなトートバッグを持ってきた。 「ちゃんと準備してたんだね」 「直樹に『準備は早いに越したことはない』って言われて……直樹、正解だね」 ……どこまでも気が利くイッチーに、ただただ感心するばかりだ。
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