act6

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それから間もなくして、タクシーの迎えが来た。 私は、よろめく萌を支えながら、どうにかタクシーに乗った。 萌は、顔をゆがめて苦しそうに息をしている。 私はそんな萌の肩をさするくらいしかできない。 ――萌も赤ちゃんも大丈夫だよね? これが陣痛なのか、それとも何か良くない痛みなのか? あまりにも辛そうな萌に、とても不安になる…… ブーッブーッと、スマホが振動し始めた。イッチーからの電話だ。 電話にでると、 『萌に電話しても出ないけど、萌は?萌大丈夫なの?』 イッチーの動揺した声が耳に響いた。 「それが、私もよく分からなくて……今タクシーで病院に向かってるよ」 と、話してる途中で、「もうすぐ病院着きますよ」と運転手さんに声をかけられた。 「あっ、病院に着いたから!後でまた連絡するね!」 『えっ?もしもし、みやまー……』 イッチーが何か言いかけてたけど、私は電話を切った。 病院に着くと、萌は、看護師さんたちに車椅子に乗せられ、急いで分娩室へと運ばれて行った。 私は、分娩室前の廊下の長椅子に座って待つことにした。 夜間の病院は照明が減らされて薄暗く、なんとなく心細い…… イッチーには、『分娩室に入った』とメッセージを送った。 でも、『初産は予定日より遅れがち』って聞くのに、2週間も早くて大丈夫なの? という不安が頭をよぎる。 助産師さんらしき声はたまに聞こえてくるけど、何を言っているかまでは聞こえず、状況がよく分からない。 ――萌頑張って!赤ちゃん無事生まれてきて! 目を瞑り、組んだ両手に額を当て、ただ祈り続けた。 それから……どのくらい時間が経ったのか? コツコツと廊下を歩く足音が聞こえてきた……と思ったら、私の前で止まった。 そして、 「香奈……」 と、ずっと聞きたかった声が上から降って来た。 「え……どうして……」 顔を上げると、拓海が優しいまなざしで、私を見ていた。
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