5598人が本棚に入れています
本棚に追加
ベッドの上で悶えていると、萌がバスルームから出てきた。
体を起こして萌を見る。
すっぴんの萌は、元々可愛らしい顔立ちではあるけど、メイクしているときより柔らかく見える。だから俺は、化粧してるときよりすっぴんの萌の顔が好きだ。
萌を近くで見たくて、萌を隣に座らせるべく声をかけた。
「ねぇ、すごいよこのベッド、寝心地めちゃくちゃいいよ!萌も疲れたでしょ、こっち来なよ」
しかし……萌は、はしゃぐ俺を「うん、後で」と適当に受け流し、ソファに座ってスマホを見始めた。
つれないなぁ。
いじけてベッドの上をゴロゴロしていると、萌のつぶやく声が聞こえた。
「……嫌だったよね……」
「えっ?イヤ?」
何のことか分からず、俺は体を起こして聞き返した。
「香奈……」
「みやまー?」
「今日来たくなかったよね。話全然できなかったな」
「それは、俺たちが忙しかったから気を遣ってたんでしょ?」
萌がフルフルと首を横に振った。
「……私、昔よく香奈に『香奈の方が先に結婚する』って言ってたんだよね。本気でそう思ってたから。まさか、中村くんと別れると思ってなかったし……なのに、私の方が先に結婚することになるなんて」
「しょうがないよ。先の事なんて誰も分かんないんだし」
香奈と話しづらくなっちゃった、と肩を落とす萌を見て、俺はベッドの上で両手を広げた。
「萌、おいで!」
萌は俺を見た。そして、俺の胸に飛び込んで……くるわけはなく、黙って俺の広げた腕を下にさげて、隣に座った。
「前みたいに普通に話したい」
コテン、と萌が俺の肩に頭を乗せた。俺は萌の肩を抱いて優しく撫でた。
最初のコメントを投稿しよう!