5578人が本棚に入れています
本棚に追加
/385ページ
Side 香奈
「えっ?拓海戻ってくるの?」
昼休み。今日は久しぶりに萌と外でご飯を食べている。
最近のお昼は、コンビニで買ったおにぎりとかサンドイッチを席で食べながら仕事をすることが多いので、外でのランチは久しぶりだ。
会社近くの居酒屋で、ランチタイムは3種類の定食しかないお店。私は以前よく食べていた、煮魚定食を選んだ。
「うん。来月」
豆腐を口にしながら、萌が言った。ちなみに、萌のお気に入りは肉豆腐定食だ。
萌は総務で仕事をしている。
普通、異動関連の情報は、役職のない私たちには異動の直前にならないと発表されない。
けど、萌は、異動時の住居等の手続き関連を総務がしているため情報が早い。
いらっしゃいませー、と明るい女性の声が店内に響く。汗を拭きながらサラリーマン風の男性3人が店に入ってきた。9月に入ってもまだまだ暑さは厳しい。
「なんかビザの都合で、最長5年までしか向こうにいられないみたいだよ。大抵3年でみんな戻ってくるから気にしたことなかったんだけど」
拓海分かってたくせに、あのとき言わなかったんだ。アイツー!
「本当は河瀬も3年で戻ってくる予定だったらしいけど、ちょうど大きい案件が動き始めたタイミングで戻れなかったみたい。向こうのクライアントにすごく気に入られてたんだって」
「ふぅーん」
最初のコメントを投稿しよう!