ネオンと星屑

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『穢れを知っているから、私たちは美しいものを美しいと思えるのだ』  ふと、どこかの有名人が、そんなことを言っていたのを思い出した。  このネオン街の真ん中に立っていると、その名言らしきものが前触れもなしに頭を過ぎる。  スナックやバー、ナイトクラブ、それらを彩る電飾看板に、明滅を繰り返す古びたイルミネーション。  空を見上げれば視界は高層ビルに遮られ、隙間から見える暗闇はいつも白んでいる。  通称、“眠らない街”。  ここで私は生まれ育った。  煌々と輝く人工的な明かりに相反するように、雑踏を歩く人々は皆暗い顔をしていた。かく言う私も、そのひとりだ。  もう随分と昔から、私は家出を繰り返している。  それは癖のようなもので、隣を歩く恋人が毎日変わることもまた、私の悪い癖だった。  私はまたあの言葉を思い出していた。  だが、その真偽を問うとすれば、それはきっと偽りだろう。  人は汚れなど知らなくていい。知る必要など、どこにもないのだから。  汚れに対して無知だったとしても、美しいものを目の前にすれば、人は感動出来るのだから。  生まれてこの方、心を揺さぶるほどの何かに出会えたこともない私は、そう思う。  
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