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◇◇◇
「それじゃあ、先に新しい家に行ってくるね」
「はーい、業者さんによろしく」
「了解」
わたしは、あと1週間したらここを引っ越す。理由は、彼氏と一緒に住むから。
あ、もう旦那か。口の中でその慣れない単語を唱えてみたけれど、何だか気恥ずかしくて、まだ言えないな。
今は引っ越し前のお掃除中。そこかしこか写真やらアルバムやらがでてきて、いちいち見てしまうものだから、全然進まない。
「うわー懐かしい」
中学生の頃の手紙がたくさん入った缶を見つけてしまった。この時付き合ってた初彼、今も元気かなぁ。ふられた時はめちゃくちゃ哀しかったけど、それも今じゃいい思い出。
「あ」
クローゼットの中に取り掛かって30分経過したころ。
最近流行りのコートやら、ミニバッグやらを取り出して、その奥に見覚えのない赤い袋が入っているのを見つけた。
「これ、なんだっけ……」
腕を伸ばしてその赤い袋の表面に触れる。ふわふわとした感触がわたしの指先に、袋越しに伝わってくる。
ぐっと掴んで引っ張り出してみれば、ご丁寧に緑のリボンが結ばれている。赤い袋に緑のリボン。まるでクリスマスカラー。
随分と前から置いてあったからか、一緒にほこりが舞い散って、きらきらと昼間の陽光に煌めく。
ひとつだけ咳をして、そうして持ち上げた。
サンタさんが隠していったプレゼントのようなそれに、年甲斐もなく心なしかわくわくして、緑のリボンを引っ張った。
しゅる、と音をたててほどけたリボン、開いた袋の中にいたのは。
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