あーちゃん、あのね。

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 初めて会った時のことが、とっても懐かしいなぁ。  でもね、正直にいうと、ぼくはきみのことが嫌いだったよ。  きみはサルみたいに真っ赤な顔をして、大きな声で泣いていた。柔らかくて小さな体のどこからそんな声が出るんだってほど、大きな声で、世界に向けて抗議していた。  ぼく、実は初めは、きみのおかあさんのものだったんだよ。  きみのおかあさんは、ぼくを雑貨屋さんで見つけてくれたぼくの恩人。ひっそりと棚の陰に隠れていたぼくを、この広い世界に連れ出してくれたんだ。  あの頃はまだ、きみのおかあさんも、お化粧すらしてなかったなあ。真っ赤な林檎みたいなほっぺでぼくを抱き締めてくれた。  結婚してから、なんだか綺麗になっちゃって、それに反比例するようにぼくは埃をかぶっていた。 「あーちゃん、泣かないで」  そう言って、きみのおかあさんは、ぼくのことをきみに差し出したんだ。  嘘だろ。ぼくは真理子のものなのに。  嫌だ、渡さないで。  必死で願ったけれど、3秒後に、ぼくの手にふにゃふにゃの小さな指が触れた。  ぎゅう、と力強く握られる。  痛いよ。  そう思いながらも、その強さに、泣き出しそうになったんだ。久しぶりに、必要だよって言われた気がして。  そうしたらきみは、ぼくのことを涙で濡れた大きな瞳でじっとみつめて、ひまわりみたいに笑ったね。  そのときの笑顔は、今でも、ずっと胸の中にあるよ。
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