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そうして、住むおうちが2回くらい、変わったね。
あーちゃんがぼくのことを連れて行ってくれて、ほんとうにほっとした。もしかしたら、置いて行かれるかも、って思った。
「ぐれい、ぼろぼろになっちゃったね」
えっ、そんなこと言わないでよ。ぼくはまだ大丈夫だよ。
「……これ以上、外に出しといたら、壊れちゃうかな」
嫌だよ、壊れたりしないから、大丈夫だから。
「ねぇ、どうおもう?」
きみは、隣に立っているおとこのひとに、そう聞いたね。
そのとき、ぼくは気がついたんだ。
ああ、もう、ぼくはあーちゃんにとっての役目を終えたんだなって。
きみのとなりには、ぼくと同じくらいの大きな愛が、溢れてたんだって。
「あゆみの大事なぬいぐるみなんでしょ?」
「うん……」
「じゃあ、この袋にいれて、しまっておいたら?」
「うん、そうする」
そんな声がして、ぼくの視界は真っ赤に染まる。
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