あーちゃん、あのね。

8/14
前へ
/14ページ
次へ
 そうして、住むおうちが2回くらい、変わったね。  あーちゃんがぼくのことを連れて行ってくれて、ほんとうにほっとした。もしかしたら、置いて行かれるかも、って思った。 「ぐれい、ぼろぼろになっちゃったね」  えっ、そんなこと言わないでよ。ぼくはまだ大丈夫だよ。 「……これ以上、外に出しといたら、壊れちゃうかな」  嫌だよ、壊れたりしないから、大丈夫だから。 「ねぇ、どうおもう?」  きみは、隣に立っているおとこのひとに、そう聞いたね。  そのとき、ぼくは気がついたんだ。  ああ、もう、ぼくはあーちゃんにとっての役目を終えたんだなって。  きみのとなりには、ぼくと同じくらいの大きな愛が、溢れてたんだって。 「あゆみの大事なぬいぐるみなんでしょ?」 「うん……」 「じゃあ、この袋にいれて、しまっておいたら?」 「うん、そうする」  そんな声がして、ぼくの視界は真っ赤に染まる。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加