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細い体を、背後から抱き締めた。
先ほどまで交わっていた、愛しい理玖さんの体。
最初は、狭いベッドで仲良く並んで眠ろうと思っていた。
しかし、布団の中で密着していたら、触れたくなってしまうのは当然の流れだ。
何の抵抗もなく腕の中に納まってくれて、心臓の音が近いのが嬉しい。
理玖さんが湯上りに着ているのは俺のTシャツで、ウチの風呂に入ったから自分と同じシャンプーの香りが鼻を掠めて口元が綻ぶ。
自室のベッドで、二人で朝を迎えるなんて、まるで同棲のようだ。
もし一緒に住んでくれる事になったらもっと大きなベッドを買おうと思っていたけど、こうして狭いベッドでくっ付いて寝るのも捨てがたい。
理玖さんとの生活を夢見ながら、手は無意識に胸元へ向かい、Tシャツの上からゆっくりとなぞった。
薄いとはいえ、布越しでも理玖さんの乳首は感度が良く、甘い吐息混じりに身体を震わせている。
「……雪橋、擽ったい」
抗議のようだけど、俺の耳にはそうは聞こえない。
それは「気持ち良い」の間違いだから。
「ゆき……あっ!」
きゅっと先端を摘むと、理玖さんの身体がビクンと跳ねた。
その反応が嬉しくて、更に触り続ける。
撫でるように、擦るように、シャツの上から優しく愛撫をして愉しむ。
胸だけでは物足りず、無防備に晒された理玖さんのうなじに唇を当てた。
理玖さんの身体は、どこもかしこも美味しくて困ってしまう。
どれだけ味わっても、すぐに欲しくなる。
「触るなら、ちゃんとしろっ」
相変わらず、理玖さんは俺に甘い。
腕の中で、もぞもぞと抵抗に近い動きをしながらも、「止めろ」と怒ることはしない。
その優しさにつけ込む俺は卑怯な男なのだろう。
「『ちゃんと』って?」
首に押し付けたまま唇を動かす。
そわそわと動く理玖さんの脚にも、撫でるように脚を絡める。
こうしてピタリとくっ付いていると、幸福物質が分泌し過ぎて気分の高揚が抑えられない。
要求に上限がなくなってしまう。
「服の上からじゃなくて、直接……」
「でも理玖さん、ここ触られるの嫌って言ってませんでした?」
「ひぁっ……」
硬くなってきた乳首を爪先で引っ掻けるように弾くと、理玖さんが悲鳴のような声を上げた。
その反応に気を良くして、摘まんで引っ張って弄ぶ。
「や、やっ、め」
「じゃあ、止めます」
ぱっと手を放して、理玖さんに素直に従う振りをする。
止めるつもりはないけど、今は一旦引く。
俺が手を放した事にほっとするか、実は残念に思ってくれるか。
後者なら、今までで一番可愛く「もっとして?」とお願いしてもらおう。
理玖さんに会えない夜も、それを思い出すだけでイけるくらいの可愛いやつを。
解放されて一息付いた理玖さんが、まだ抱き締めたままの俺の腕を掴んだ。
まるで、離れるのを阻止するように力を込めて。
元々離れる気など無かったけれど、そんな事をされたら閉じ込めてしまいますよ。
「ごめん。もう嫌じゃないから……止めないで」
理玖さんは、顔だけを何とかこちらに向けようと身じろぐが上手くいかない。
僅かに見えた顔は悲しそうに歪んでいるようだった。
無理をさせているなぁ、と胸が痛くなる。
こんな事で、俺が拗ねると思っているんですよね。
拗ねたら、もう二度と手を出されないとでも思ってます?
だから、無理して「止めないで」なんて言ってくれているんですね。
本当は疲れ果てて眠りたい筈なのに、断る事を知らない理玖さんはまたしても俺の餌食になろうとしている。
それだけ愛されているんだな、と幸せを噛みしめる。
「もう止めます。その代わり、朝までこうしていていいですか?」
細い身体をぎゅっと抱き締めて、謝る代わりにそっと囁いた。
意地悪な奴ですみません。
傍にいてくれるだけでいいんです。
明日の朝も、俺の腕の中にいて欲しいんです。
それだけで十分な筈なのに、俺が欲張ってしまった所為で理玖さんを悲しい気持ちにさせてしまった。
「でも……」
「おやすみなさい、理玖さん」
「雪橋、オレ本当に……ンっ」
まだ言いたいことがあるらしい理玖さんの首筋にキスを落とし、柔らかい髪を撫でて瞼を落とした。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
2021.1.30
あれ、長い。
短い話の寄せ集めにする筈が、なんか長い。
エピソード的には2ページ目の「02 彼氏」から繋がっています。
あと少しでこの一連の流れは終わる予定です。
こんなにダラダラと続くとは思いもしませんでした。
すみません。もう少しお付き合いください。
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