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最後まで彼は紳士的で、そして優しかった。駅まで私を送り届けてくれた彼は私にそっと耳打ちした。
「連絡先は全部消すから安心して。でもさっきの言葉は忘れないでほしい。旦那さんと家族、大切にな」
私はきっと忘れない。今日の日も、彼の事も。
ねぇ、あなたの気持ちが何となくわかったよ。
全てを失ってまでこの胸の高鳴りに身を寄せる事は出来ないけれど、一度感じた高鳴りを簡単に消し去る事なんか出来ない。
忘れようとすればするほどにその感覚がきっと頭の中を埋めつくしていくだろうし、苦しい。
だけど変わらないものがある。
それは私のあなたへの思いで、あなたへの愛。
きっとあなたも同じように感じてくれているんだよね?
2人の中に別の誰かへの思いがあって、きっともうそれは変える事が出来ない。
だけどそれよりも強い思いもまた、変えることは出来ないし変わらない。
ああ、やっぱり世の中は矛盾と理不尽とで溢れている。
正しい答えなんかどこにもない。
正解のない答えを、いつも探しながら人は生きている。
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