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作家とファン
「……」
チックタックとなる古びた部屋で、一人の作家は頭を抱えていた。
目の前にある原稿が進まない。
そんな、呑気な事で、手に持った万年筆をトントンと叩きながら頭を抱え込んでいた。
「あー、駄目だ。いいネタが思いつかん」
ガリガリ、と頭を掻きながら、作家はまるで親に原稿を殺されたかのように原稿に向かって睨みつける。
コンコンッ、
すると作家のいる部屋に可愛らしいノックがかかる。
ふと、その来客に先程まで凄く頭を抱えていた作者は不機嫌そうな表情をしながら原稿から目を離す。
背後には多くの古びた本尾山が積み重なっており、足場には床の色が見えなくなるほどの原稿とインクが散らばっていた。その様な中で、奥底に開かずの扉の様に佇んでいるたった一つの扉。作者はそんな扉をじっと眺めていると、再びコンコンッ、と可愛らしいノックオンが響く。
「いるぞ」
そして、ノックへの返答にまるで熟年夫婦の様な返事をすると、ギィ、と立て付けの悪い扉の悪い音が部屋の中にへと響く。
「どうした」
作者は来訪した客人の顔を見ようともせず、再び原稿にへと目を向ける。
「どうしたって、珈琲をお持ちに来ただけです」
「そうか」
来訪した
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