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・オープニングと撮影
「おはようございます!」
と環菜は元気よく言った。
「現在、時刻は午前9時。鎌倉駅の西口……でしょうかね? に来ております。ご覧ください、この晴れた青空! よかったですねえ。ちょっと寒いですけどね、歩いたら暖かくなるでしょう」
「待て待て待て」
璃子が後ろから環菜を蹴った。
「誰だ、君は。誰に話してんの」
「我々はこれからバスに乗って、報国寺まで参ります」
と清香が言った。
「いやあ、土日とあってやはり人は多いですね」
「ですねえ。まあ、お天気もいいですしね。絶好のお出かけ日和と言いますか」
「実はですね、」
ポン、と清香が軽く手をたたいた。
「今日はですね、とてもいいお知らせがあるんですよ」
「いいお知らせ?」
環菜が首を傾げる。
「何と、今回の卒業旅行のメンバーのうち、生島環菜、野沢璃子、里見悠希の3名、見事志望校に合格したという、おめでたい話題が入りました!」
言いながら、パチパチと拍手をした。
「あ、どうも、すいません。ありがとうございます」
環菜は方々に向かって、ペコペコ頭を下げた。
「これ、あれですかね。画面の下にテロップ出てるんですかね、今ね」
笑いながら、両手で下方を指さし、横に動かす。
「祝、合格! 生島、野沢、里見、大学進学決定! みたいなね」
「これで、我々4人、進学先が決まったということで。お祝いもかねて楽しめるわけじゃないですか」
「正直ね、ホッとしてます」
環菜は手を体の前で組み、何度かうなずいている。
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