『卒業旅行したいけど、金はないから日帰りでどっか出かけよう計画』

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・ハトとサブレとハナヒロと(SPゲストあり)  報国寺を回り、鶴岡八幡宮をつるつるして、途中で昼食を取った。もちろん、清香の要望通りの釜飯である。  その後は、自由時間として、それぞれ好きにお店を回る。  お土産を見たり、食後のアイスを堪能したり。  そんな中、清香が1人でしらす丼を食べに行ったらしい。しかも、釜飯を食べた直後だ。 「だって、食べたかったんだもん」  彼女の辞書に、食休みという言葉はないらしい。 「やあ、駅に戻ってきたよ」  人でにぎわう小町通りを抜けて、環菜たちは鎌倉駅前に戻ってきた。 「いよいよ江ノ電だね」  悠希がはずんだ声を出した。 「江ノ電、江ノ電」  すっかり興奮した環菜が、手拍子を打っている。 「じゃあ、さっそく行きますか」 と璃子が言った。 「ちょっと待ったあああ!」  突然、清香が大声を出した。 「わ、何、うるさっ!」  一緒にいた3人が耳をふさぎ、周りの人たちが何事かと振り向くほどの声量である。 「いきなり大声出さないでよ」  璃子が文句を言った。 「びっくりした……びっくりした……」  環菜が心臓のあたりを手で押さえ、肩を上下させている。 「心臓、すごいドキドキしてるよ……今、心電図取ったら、絶対アウトだと思う」 「何を言ってるんだ、君たち」  清香が両手を腰に当てて、堂々と言い放った。 「とても重要なことを忘れているじゃないか、そりゃ大声の1つや2つ出すよ」 「2つは出さないで」  悠希が、肩をすぼめた。 「忘れてるって、何?」 と璃子が尋ねた。  清香は右手を掲げると、ビシッとある方向を指さした。 「鳩サブレ、買わなきゃ!」 「忘れてたあああ」  3人の表情にピシッと衝撃が走った。
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