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「鎌倉に来て、鳩サブレを忘れるとは」
「危うく、そのまま去ってしまうところだった」
「何ということだ……我々としたことが……」
3人はいっせいに、己の注意力のなさを嘆いたのだった。
「そこに、鳩サブレで有名な豊島屋があります! 寄らないという選択肢がありますか!」
「いえ、ありません!」
3人、ピシッと敬礼をした。
買おうと思えば都内でも買えるし、オンラインでも買える、なんて今は言いっこなしである。
「ようし、では行こう」
かくして、4人は鳩サブレを求めて、入店した。
「これ、あれなんだよね」
商品が並べられたショーウィンドウを指さして、環菜が言った。
「10枚入りの、袋で梱包されてる方が、1枚当たりの値段が安いんだよね」
「そうなの?」
「ほら、10枚入り袋と、9枚入り箱とが、値段一緒なのよ」
「本当だ」
「箱代ってこと?」
と璃子が言った。
「ま、そんなところじゃない」
環菜はリュックから財布を出しながら言った。
「仙台の萩の月もそうだったじゃん」
「そうだっけ?」
「個包装の箱がない方が、少しだけ安かった」
「そうだった、覚えてる」
うなずいたのは、もちろん清香である。
「じゃあ、お土産でもなけりゃ、袋の方がいいよね」
と璃子が言った。
「箱に入ってるより、1枚多い方がいいもん。私、それにしよう」
環菜、璃子、悠希はそれぞれ10枚入りの袋詰め合わせを、1つ購入した。自宅用である。
さて、問題はこの人――。
「どうしようかな」
清香は腕を組んで考えている。
「20枚以上でも、袋の方が得だよ」
と環菜が言った。
「そうだよね、そうなんだよね」
たくさん入っている缶の詰め合わせもあるが、1枚当たりなら、袋の方を何個か買った方がお得だ。
そうなると、袋をいくつ買うのかという話になってくる。
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