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第一章 「森の中での出会い」
真っ暗な森の中を、茶髪に淡い緑の目の少女が走っていた。彼女の息は荒く、今にも地面に座り込んでしまいそうだ。
背後から紫色のムカデやトカゲたちが追いついてきて、少女にかみつこうとした時、ワシミミズクのかぎ爪が描かれた剣を持った銀髪に青い目の少年が現れ、炎でそれらを焼き消した。
「ありがとう」と少年に言ってから、少女は地面にひざを抱えて座る。少年も同じようにして「平気か?」と声をかけてきた。「うん。私はアリス・アンダルシア。あなたは?」
「オレはフォイアー・ダルジュロス。二十歳の兄が国王なんだ」
アリスは驚きながら彼を見つめる。ダルジュロス王国は多国籍の人が共同生活をする国であると母方のおばが言っていた。
「ここから一本道を行くと着くぞ。案内するから来いよ」フォイアーはそう言って、白い息を吐きながら歩き始めた。しばらく歩くと、ガレキが散乱している道に出た。
「ここは十年前、敵国ミルドラドとの戦争で二十万人の死者を出した場所
なんだ。ここで騎士や市民たちが週に三回、孤児たちに食事を作って配ってる。着いたぞ」二人の前に淡い黄色の長方形の塔が現れた。屋根の上にある
国旗にはフォイアーの剣と同じワシミミズクのかぎ爪が描かれていた。
「オレたちの国、ダルジュロスだ」と彼が言って、門の前にいる兵士に「兄さんはいるか?帰ってきたことを報告したい」と声をかけた。
「陛下は一階の広間にいらっしゃいます。おかえりなさいませ、フォイアー様」と二人を通してくれた。
石でできた階段を上がって一階に行くと、濃いグリーンのカーテンが風でふくらんでいた。同じ色の長椅子に、弟と同じ銀髪を肩まで伸ばした青い目の
男性が立っていた。銀色のボタン付きマントの下に同じ色の鎧を着て、引き締まった体を伸ばしながら体操をしていた。
フォイアーが軽く肩をたたくと、弟とアリスに気づいてにっこりと笑った。
「兄さん、ただいま」「おかえり。この女性は誰かな?」「アリス・アンダルシアです。はじめまして陛下」「ヴィント・ダルジュロスだ。アンダルシア家はキンモクセイの花を使った雑貨や首飾りを売るのが生業だったな」
「はい。ですが今はムカデやトカゲたちのすみかになってしまっています」
「そうか。これからどうするんだ?」「ここでフォイアーの助けになります」
と答えたアリスと弟を、ヴィントは透明なガラスでできた四角い台の前に立たせる。
「フォイアー。お前はアリスの専属騎士となり、敵から守りながら彼女と
この国で過ごすか?」「はい!」
「アリス。お前は彼を自分の護衛とし、この国について知ることに同意するか?」「はい」
「よし。では後で、他の騎士たちを紹介する。弟と外を見てくるといい」
と言って、ヴィントは会議のために四階に上がっていった。
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