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四章 「パーティーの夜」
翌朝、アリスが塔の広間に行くと騎士たちが料理やフォークなどの食器をテーブルに置いていた。フォイアーやシャーリーもその中にいて、ヴィント
が彼らに指示をしている。
「おはようフォイアー。私にも何か手伝わせて」「じゃあ皿を三枚、隣の
テーブルに置いてくれ。割らないようにな」「うん」
花柄の皿を素早く置き終え、果物のジュースをコップに注ぐ。料理の数を見て回り終え、「休憩!」というヴィントの声が響いた。
「お前、作業がすごく速いな」木でできた椅子に座っていると、フォイアーが話しかけてきた。水色のワイシャツに白のズボン姿だ。
「父さんたちと料理を作ってたから。最初は遅かったけど、だんだん速くできるようになったの」「へえ。今日のパーティーでお前が着るドレス、兄さんが預かってくれてるぞ。今晩渡してくれるって」「分かった。またあとでね」
アリスは栞をブラウスの胸ポケットから取り出し、じっと見つめる。両親と
二人の姉との思い出が入っているのだ。握りしめると、甘い香りがあたりに
流れた。(フォイアーたちのためにも、解毒剤を増やそう。でも、どうやったら?)
そんなことを考えながら塔の外にある花屋に向かうと、グリーンのワイシャツに紺のブーツ姿のエルドランがユキヤナギを買っているのが見えた。
肩をトントンとたたくと、「アリス。どうしたの?」と声をかけられた。
「解毒剤を20個くらいに増やせないか、考えてるの」と答えると、「その
栞にもキンモクセイが入ってるんだろう?ハチミツを混ぜてみるのは?」と
案を出してきた。
「うん。試してみる。ありがとう」と言って彼に手を振ってから寝室に戻り、
机に小ビンを置いて栞を握ると、オレンジ色のミツがビンの中に入り始めた。
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