ダルジュロス王子とアンダルシアの少女

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アデルが「いいなあ」と呟きながら毛布を渡してくれる。「ありがとう」 「どういたしまして」にっこりと笑った弟の肩を、ヴィントが軽くたたいて アリスの前に立ち、「無事でほっとした」と声をかけた。  「陛下、みんな。ありがとうございます」彼女の肩に移動したワシミミズクが再び鳴く。アーノルドが彼らに銃を向けていた。  「お前たちはアリスを連れて馬車に乗れ」と騎士たちに言ってヴィントが剣を抜き、少しずつアーノルドに近づく。そして彼の銃を下の部屋へと落として 爆発させた。  腕から血を流しながら、アーノルドは紫色の爆弾をヴィントに向かって投げる。剣を握ったまま床に座り込んで吐血(とけつ)し始めた彼のポケットから、小ビンが落ちて足元に転がった。アリスが入れたものだ。  コルクを開けて口に入れると、キンモクセイの匂いとハチミツの甘み、そして紫色の粉が飛んでも失神しないと感じた。  アーノルドは絶叫していたが、投げた二個目ごと船の床に()いた穴から海に落ち、溺死(できし)した。    
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