ダルジュロス王子とアンダルシアの少女

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 二人は塩パンとオニオンスープを買って食べていた。「あなたは何歳なの?」「16。12歳の弟、アデルがいるんだ」「へえ。三兄弟なんだ」 「うん」チーズパンを食べていた小柄な少年が二人に気づき、こちらに近づいてきた。兄二人と同じく銀髪に青い目だが、短髪であどけない顔立ちだ。 「フォイアー兄さん、さっきエルドランさんと森の前で会ったんだ」「解毒剤づくりの練習の帰りだろうな。あいつは一人でいることが多いんだ。アデル、彼女はアリス・アンダルシアだ」「こんにちは」「はじめまして、アリスよ」 「陛下が騎士たちを紹介したいって。一緒に戻ろう」  広間に行くと、ヴィントの前に紺色、灰色、緑の鎧を着た三人の男女が立っていた。  「真ん中にいるのがシャーリー・ブラウビューヒャー、彼女の両隣にいるのがエルドラン・ゾーネとローゼ・シュティルだ。彼らが塔の中にある部屋について教えてくれるから聞いてみるといい」  アリスは紺色の鎧を着た女性騎士シャーリーに「はじめまして」と声をかけ、握手をする。他の二人は会釈だけすると、「こちらです」と言って廊下 を歩き始めた。  明かりがついた広い部屋に入ると、「ここは浴室です。ハチミツで作ったせっけんと塔の外でとれる花からできたタオルが置いてあります」シャーリーが解説しながらせっけんを手に取り、アリスに渡す。  匂いを嗅いでみると、甘い香りに満面の笑みになった。浴室を出て廊下を 歩いていると白いドアが見えてきた。「こちらがアリス様のお部屋です」と シャーリーがろうそくに火をつけると、部屋の中が明るくなった。 中央にある薄い緑のベッドに座ると、家々の明かりが見えた。「私たちは一度広間に戻ります。フォイアーもいますので、彼とゆっくりしてください」 「ありがとう」三人は静かにドアを閉めて出ていった。    「アリス」「ん?」「ムカデやトカゲの毒と、ミルドラド王国について話す」と言ってフォイアーは彼女のベッドのそばにある椅子に座った。 「あいつらに噛まれると、その日のうちに命を落としてしまう。それぐらい 強い毒なんだ。お前を案内してくれたシャーリーも、片足を失ったけど生き残った。この王国の騎士では彼女が初めてなんだ。  ミルドラド王国では八年前からその毒を使った爆弾が作られている。王はお前も自分のものにしようと考えている。オレも今晩からエルドランと交代しながらこの部屋の廊下で過ごす」と言って、彼は真ん中のベッドに移動する。  「フォイアー」「ん?」「ムカデやトカゲたちは何に弱いの?」「火だな。 オレは兄さんほど多く出せないけど」「そうなのね」  「浴室に行って汚れを落としてから寝た方がいい。そろそろ夜の10時に なる」「うん」アリスは浴室に移動すると、ハチミツのせっけんで顔や髪を 洗ってからお湯の中に入った。「気持ちいい」とつぶやきながら足を伸ばすと、体が温まっているのが分かった。  白い綿から作られたパジャマを着て部屋に戻り、ベッドに入る。それから アリスは3日ぶりに熟睡することができた。  深夜3時。彼女の部屋に近づこうとする五人組の男にエルドランが気づいて、フォイアーに知らせる。三人は捕縛したが、残りの二人がベッドへと向かい、目を覚ました彼女の口にさるぐつわを噛ませた。  フォイアーは部屋の中に飛び込んで二人の男の剣を落としたが、彼らは塔の 外へと逃げていた。      
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