ダルジュロス王子とアンダルシアの少女

6/22
前へ
/22ページ
次へ
 「私に買ってくれたの?」「うん。オレとのダンスの時に着てほしい」彼の 声には気恥ずかしさがこもっていた。アリスは泣きながらうなずくと、「ありがとう」ともう一度言った。  「明日は塔の外にあるパン屋に行ってみよう」「うん」フォイアーは「おやすみ」と言ってドアを閉め、廊下を歩いて自室に戻った。  アンダルシア家について書かれた本を読んでいると、『首飾りにするためのキンモクセイが枯れてしまい、お金が入ってこない。ムカデたちに食べられてしまったのだ。  三女のアリスに、私が作った栞を渡そう。マーク・アンダルシア』という文に驚く。彼女の父親が書いたものだ。  「(塔に来た時に持ってた栞は、彼が作ったものだったんだな)」本を毛布のそばにおき、ベッドに入る。翌日彼が起きたのは、朝の6時だった。  「おはようアリス」大広間で彼女に声をかけると、にっこりと笑って「今日はよろしく」と答えた。ベストの上に白いコートを着てズボンをはいた彼女は、フォイアーと一緒にパン屋の前に来ていた。    
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加