ダルジュロス王子とアンダルシアの少女

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 心拍数が上がるのを感じながら、アリスは「当日、持っていくものはある?」と聞く。「ないな。全部用意されてるから」と答えると、彼女がほっと したのが分かった。  「不安だったのか?」「うん。初めて森で会った時、あの栞以外持ってなかったし。逃げることだけを考えてた」「そうか」と返し、フォイアーは月明かりを見つめる。  「ミルドラドの十七代王は、ここダルジュロスを毒の入った爆弾で攻撃する つもりらしい。お前も連れて行くと言っていたそうだ。オレはシャーリーや エルドランたちと一緒に、お前を守って戦うよ」  アリスは「フォイアー。これを持っていて」と言って彼に、キンモクセイの花の形をしたペンダントを渡す。「私が作ったの。ムカデやトカゲの毒を無効化して、痛みを軽くしてくれる薬が入ってる。使ってほしい」  フォイアーは「ありがとう」と言ってペンダントを首からかけた。「寒くなってきたから、風邪をひかないようにな」「うん。温まってくるね」と答え、彼女は浴室へと向かった。  フォイアーはエルドランと一緒に階段を上がって中庭に移動すると、互いの 剣を構える。先にエルドランが動き、青い煙でフォイアーの視界をさえぎろう とする。  剣から紫の炎を出し、煙を払って近づこうとすると背後にエルドランがいるのが分かり、彼が動く前に池のほうへと移動させた。  「炎が前よりも多くなってるよ。近づくと汗が出てくる」「ムカデたちやミルドラドの兵が来るのは五日後だ。一緒に戦ってくれるか?」「うん」フォイアーは「よかった」とつぶやいて二人でシャワーを浴びた。 その夜、寝室に戻ったアリスはシャーリーから渡されたペンダントを眺めて いた。ワシミミズクのかぎ爪の形になっていて、身に着けた者を守るという。    
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