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「日向今年から一人暮らし? 良いな~」
「いいでしょ、通学もめちゃくちゃ楽になったし、家に帰っても生意気な妹はいないし、もう最高」
口を尖らせる友人とは対照的に、柚原日向は満足げな笑みを湛えた。
一年生の頃は、往復二時間掛けて通学していたのだが、満員電車に揉まれる毎日に耐え兼ねて、今年、学校の近くに引っ越してきたのだ。
自転車通学になった今、ストレスは激減し、一人暮らしに憧れていたことも相俟って、あまり楽しいと思えていなかった高校生活は、確実に薔薇色に染まり始めていた。
「ということで、僕今日も授業終わったらすぐ帰るから」
「ん? まだ片付けてねぇのかよ」
「仕方ないだろ、手違いで引越しもギリギリになっちゃったんだから」
「……まぁでも良かったよな、ちゃんと始業式に間に合って」
高校が始まる前に荷解きを終えたかった、と言うのが本音だ。
だが、もう済んだことは仕方ない。今は一刻も早く帰宅し、自分好みの部屋を作り上げるのみだ。
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