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終業のベルが鳴り、生徒たちが一斉に動き出す。
帰る、と言いつつも友人たちとの雑談に花を咲かせていた日向は、数分後、あることに気が付いた。
「あれ? これ……」
隣席の机上に、玉葱のキャラクタのストラップをぶら下げたスマートフォンが置いてある。
「あ、その席って双葉じゃね?」
加世田双葉は、二年生になって初めてクラスメイトになった女子生徒で、黒髪のロングヘアがよく似合う、清純派の美少女だ。
「荷物無いよね、忘れたのかな……」
「……日向届けてやったら? 双葉、わりと可愛いし」
「え!? なんで僕が……、お前行けよ!」
「俺忙しいから~」
「僕だって片付けがあるんですけど」
「お前が見つけたんだし行ってこいよー」
それにお前彼女いないだろ、と耳打ちされ、思わず押し黙る。
たしかに、双葉は清楚で、挨拶や言葉を交わした際の印象も非常に良い。
しかし、その好印象が必ずしも恋愛に結びつくとは限らない。
そんな日向の胸中を気にも留めず、友人たちは揃いも揃って悪戯っぽく背中を押した。
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