3人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
「私の家ね、玉ねぎ農家なの」
手渡しながら、双葉が言う。ずっしりとした重みのある袋を前カゴに入れた日向は、改めて畑を見回した。
「これだけ広いと、家族でやってても大変そうだね……」
「まぁ、わりと重労働だからね。でも、楽しいよ」
うららかな相好で、双葉は後ろに手を組んだ。しかし、遠くから祖母らしき人物に呼ばれ、柔らかな声はすぐに溌剌とした返事をする。
「ごめん、私まだ作業あるから戻らなきゃ。また学校でね!」
「……うん、学校で」
大きく手を振り、微笑む双葉を見ていると、貰った玉ねぎすら愛おしく見えてくるのだが、それとこれとは話が違う。
双葉の自宅が見えなくなったところで、もう一度袋の中の玉ねぎと睨み合ってみる。
今が旬の新玉ねぎと、貯蔵してあったという大玉の玉ねぎだ。袋を持ち上げた際に覚悟はしていたつもりだが、思った以上に量が多い。
路肩で立ち止まり、意味も無く夕日を見上げ、ぽつりと呟く。
「……これ、どうしよう」
最初のコメントを投稿しよう!