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お嬢様が、お屋敷を抜け出した。
僕がそれに気づいたのは幸運としか言いようがない。二階の窓辺に飾っている、花瓶の水を変えようとしたからだ。ふと窓の外を見ると、赤いドレスのお嬢様が走っていくのが見えた。
お屋敷の周りは庭園になっている。僕だけじゃ手入れができないから、荒れ放題だ。野坊主に伸びた植物たちが、お嬢様の姿を簡単に隠してしまう。
『お嬢様をお屋敷の外に出してはいけないよ。外には、危険がいっぱいだからね。君がお守りするんだよ』
そう、任されたのに。
僕は花瓶を乱暴に置き直すと、慌てて駆け出した。
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