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episode:1
乾いた地表、噎せ返るような空気、容赦なく照りつける太陽。人工的な草花に飾られた小道で、ベルネは蒼穹を仰いだ。
風に舞い上げられた砂が、まるで電送写真を埋め尽くす粒子のように空を白ませている。
閃光の中に放り出されたような気分になって、すぐに太陽から目を背けた。
――――この町に雨が降らなくなってから、幾年が過ぎたのだろう。
もうそれさえも分からないほどに、この町は嘗ての瑞々しさを失っていた。
これは風の噂だが、砂漠化も遠くはないらしい。
もう一度辺りを見渡す。
小さな砂粒に覆われた草花が、ゆらゆらと揺られている。
郊外で聞いた噂話が、本当に噂で終わればいいのに。そう願ったベルネだったが、心の奥に灯されていた希望の灯は、消え入りそうに揺曳しているだけだった。
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