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「おかえりベルネ、今日は随分と遅かったじゃない」
門扉を開けた瞬間に聞こえてきた溌剌とした声に、苦笑する。
「人員不足で帰れなかったのよ」
玄関でゴーグルと革のマスクを外しながら、ベルネは声の主に応答した。
その場で砂を掃って居間に向かう。
居間への扉まで数センチ、――――突然扉が勢いよく開いた。
「ベルネ! 心配して待っていたのよ!」
猫のような軽やかな跳躍で、彼女がベルネに抱きつく。受け止めようとしたベルネだったが、案の定バランスを崩してしまった。
「アミエル! 部屋から出ちゃ駄目ってお医者さんに言われたじゃないの!」
「いいえ、お医者さんが言っていたのは“部屋から”じゃなくて“家から”よ」
ベルネに跨ったまま、彼女――――アミエルは白い歯を見せて笑った。
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