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1. サングラスの女 【わたし】
それは影のように執拗だ。
知らぬ間にしたしたと忍び込み、最も効果的に作用するひだを見つけ出しては機会を窺い、衰弱した頃合いを見計らって一気に食らいつく。
もがいても――もう遅い。
それはすでに致命的なダメージを与え、制御不能にさせている。
あとは――されるがままに崩れていく。
* * * * *
七秒前に降り始めた雨が、車窓を斜めに濡らしていく。
暗く澱んだ河川敷を回り込むようにして電車は走る。
ドア横の銀色に光る鉄パイプにしがみつくように立っている女がいた。
キャメル色のコートと黒のデニムパンツ。
パンツと同じ黒のスニーカー。
服装と髪形から二十歳前後の学生だろう。
顔が半分隠れるほどのこげ茶色のサングラスと白いマスクをしている。
そのために顔のすべてが隠れている。
かえってそれが、殆どの乗客が座っている閑散とした車内の中では目立った存在になっていた。
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